2026.06.05 コラム
ケレン作業とは、塗装前にサビや旧塗膜・汚れを除去し、塗料の密着性を高める下地処理のことです。どれだけ高性能な塗料を使っても、下地処理が不十分では塗膜が早期に剥離し、設備の劣化を早める原因になります。
「ケレン」という言葉を塗装工事の見積もりや工程表で見かけたことはありませんか?
聞き慣れない専門用語ですが、実は塗装工事の耐久性を大きく左右する非常に重要な工程です。特に工場設備・鉄骨・配管など過酷な環境にさらされる素材では、ケレン作業の質が施工寿命を決定づけると言っても過言ではありません。本記事では、ケレン作業の種類・目的・施工手順・選び方まで、専門業者の視点から詳しく解説します。
ケレンとは塗装前の下地処理
ケレンとは、塗装を施す前に鉄や鋼材などの素地表面を整える「下地処理」の総称です。
主な除去対象としては、赤サビや白サビなどの腐食物、以前の塗装が浮いたり膨れたりした旧塗膜、油分や粉塵などの汚染物、そして塗面の粗さを整えて密着性を高める目荒らし処理が挙げられます。
新しい塗料は、素地にしっかりと化学的・物理的に結合することで初めて本来の性能を発揮します。サビや旧塗膜が残ったままの上に塗装しても、その異物が接着を妨げるため、塗膜は内側から浮いて剥がれてしまいます。ケレン作業によって素地を清浄に保つことで、塗料の密着性が高まり、防錆性能と耐久年数が大幅に向上します。また、素地の状態を正確に確認できるため、腐食の早期発見にもつながります。
「費用を抑えるためにケレンを省けないか」というご相談をいただくことがありますが、これは長期的に見て大きなコスト増につながります。ケレン不足による代表的なトラブルを見てみましょう。
・塗膜剥離:施工後1〜2年以内に塗膜が浮き上がり、剥がれ落ちる
・サビ再発:旧塗膜の下に残存したサビが広がり、短期間で腐食が進行する
・塗装寿命の短縮:本来10年持つはずの塗装が3〜5年で劣化し、再施工が必要になる
・メンテナンスコストの増加:再施工を繰り返すことで、長期的な維持費が大幅に膨らむ
・現場でよく見る再施工事例:工場配管のサビ再発(施工後2年)、屋外鉄骨階段の塗膜剥離(施工後1年半)、タンク設備の腐食進行など、下地処理不足が原因の事例が後を絶ちません。適切なケレンが最大のコスト対策です。
ケレン作業は素材の状態や用途に応じて「1種〜4種」に分類されています。種類を誤ると過剰処理によるコスト増や、処理不足による再劣化につながるため、現場の状況に合わせた選定が重要です。
| 種類 | 素地の状態 | 主な使用工具・工法 | (例)主な用途 |
|---|---|---|---|
| 1種ケレン | 重度のサビ・腐食 | ブラスト処理(サンドブラスト等) | 橋梁・船舶・大型鉄骨構造物 |
| 2種ケレン | 中〜重度のサビ | 電動工具(ディスクサンダー等) | 工場設備・配管・鉄塔 |
| 3種ケレン | 軽〜中度のサビ | 電動工具+手工具(活膜残し) | 一般建築・設備メンテナンス |
| 4種ケレン | 軽微な汚れ・劣化 | 手工具・ペーパー・洗浄 | 定期メンテナンス・新規塗装 |
1種ケレンについて
最も強力な処理方法で、ブラスト工法(サンドブラスト・ショットブラスト)によって素地表面を完全に剥ぎ取ります。重度の腐食が進んだ構造物や、高い防錆性能が求められる重防食塗装の前処理として採用されます。コストと養生の手間はかかりますが、最も高い密着性と耐久性を実現できます。
3種ケレンの「活膜」について
3種ケレンでよく出てくる「活膜(かつまく)」とは、まだ密着性が保たれている健全な旧塗膜のことです。3種ケレンでは、この活膜を残しながらサビや劣化部分だけを選択的に除去するため、工場稼働中でも短期間で施工でき、コストを抑えられるのが特徴です。
工場・設備塗装でこんなお悩みありませんか?
・塗装がすぐに剥がれてしまう
・サビの再発が早く困っている
・配管や鉄骨の腐食が気になる
・定期的なメンテナンス計画を立てたい
工場・設備塗装でケレンが特に重要な理由
一般的な建築塗装と比べ、工場や産業設備の塗装には特有の厳しい条件が伴います。そのため、ケレン作業の精度が最終的な施工品質を大きく左右します。
工場内では高温・多湿・薬品・油・粉塵といった複数の腐食因子が複合的に作用します。一般住宅の外壁とは比較にならないほどのスピードで素材が劣化するため、初期の下地処理が特に重要です。適切なケレンなしに塗装した設備は、数ヶ月〜1年以内にサビや剥離が発生するケースも珍しくありません。
工場の配管やダクトは、内部の流体や蒸気、外部の腐食環境によって複合的にダメージを受けます。表面から見えない内側からの腐食が進行しているケースも多く、ケレン作業によって外壁だけでなく素地全体の状態を確認することが重要です。腐食の早期発見が設備寿命の延長に直結します。
塗装の早期剥離や腐食の進行は、設備の予期せぬ損傷や稼働停止につながります。適切なケレンと塗装管理によって計画的なメンテナンスが可能となり、突発的な修理コストと稼働停止リスクを大幅に低減できます。
実際の現場では、ケレンは以下の手順で進められます。各工程を丁寧に進めることが、長期的な塗装品質を担保します。
1.現地確認:素材の種類・環境条件・面積などを確認
2.劣化診断:サビの程度・旧塗膜の密着状態・腐食深度を評価
3.適切なケレン種の選定:劣化レベルと要求品質に応じて1〜4種を決定
4.下地処理(ケレン):ブラストまたは電動・手工具で素地調整
5.清掃・脱脂:粉塵・油分・残渣を完全に除去
6.下塗り(プライマー):防錆機能のある下塗り材を塗布
7.中塗り・上塗り:指定の塗料システムで仕上げ
適切なケレン種の選定は、サビの状態・素材の種類・使用環境・コスト条件などを総合的に判断する必要があります。現場ごとに最適な方法は異なり、一律に「4種で十分」「2種にすれば安心」という判断はできません。
例えば、同じ工場の鉄骨でも、屋内と屋外、薬品を扱う工程付近と一般エリアでは、求められる下地処理レベルが異なります。専門業者による現地調査と劣化診断を通じて、過不足のない最適な施工プランを立てることが重要です。
家庭の軽微な鉄部(門扉・フェンスなど)であれば、4種ケレン程度はDIYで対応できる場合もあります。ただし、工場設備・高所作業・防爆エリアの施工は専門業者への依頼を強くお勧めします。粉塵の吸引リスク、高所での転落事故、防爆対応が必要な環境での電動工具使用など、安全管理上の問題が多く伴うためです。また、ケレン不足による再劣化のリスクも考慮すると、専門業者に依頼する方が長期的なコストを抑えられます。
Qケレンとサンダー掛けの違いは何ですか?
「サンダー掛け」はディスクサンダーなどの電動工具を使った研削作業の一種で、ケレン作業の中に含まれる工法の一つです。ケレンはブラスト・電動工具・手工具など複数の方法をまとめた下地処理の総称です。
Q何種のケレンが必要かどうやって判断しますか?
素地のサビ面積と腐食深度、要求される塗装仕様(重防食か一般防錆か)をもとに判断します。塗装仕様書やメーカーの推奨基準を参照しながら、専門業者が現地調査で判定するのが最も確実です。
Qケレン後はすぐに塗装する必要がありますか?
はい、ケレン後の素地は非常にサビやすい状態になっています。特に1〜2種ケレン後は数時間以内の下塗り塗布が推奨されます。長時間放置すると即座に再錆が発生するため、工程管理が重要です。
Q工場稼働中でもケレン・塗装工事は可能ですか?
素材の状態や作業範囲によっては、稼働中の施工が可能です。3〜4種ケレンであれば粉塵・振動の影響が比較的少なく、夜間・休日の部分施工に対応できるケースもあります。詳しくは現地確認の上、ご提案いたします。
この記事のポイント
・ケレン作業は塗料の密着性と耐久性を左右する、塗装工事の核心となる下地処理
・ケレン不足は早期剥離・サビ再発・メンテナンスコスト増大の主因
・素材の状態と使用環境に応じて1種〜4種から最適な方法を選定することが重要
・工場・産業設備では腐食環境が厳しく、専門業者による適切な診断と施工が不可欠
・初期のケレンコストを惜しまないことが、長期的なメンテナンスコスト削減につながる
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